■IMPORT
情報調整装置(Information Coordination Central、ICC)の形式名称はAN/MSQ-116(Config.2形態以前)又はAN/MSQ-133(Config.3形態以降)。1高射群(BN:Battalion)に1台のICCが配備され、隷下に6台のECSを置く。ECSと外観はほぼ同様であり、2名のオペレーター(指揮官)が搭乗する。上位組織及びAWACSとの連接が可能(日本ではさらに自動警戒管制システムBADGEとの連接が可能なように改修されている)。ECSとはUHF無線によってインターフェイスする。
無線中継装置(Communication Relay Group、CRG)の形式名称はAN/MRC-137(Config.2形態以前)又はAN/MRC-147(Config.3形態以降)。ECS-ICC間の通信でUHF無線の見通しが取れない場合、CRGを間に挟んで通信を中継する。ECS-ICC間の通信はPADILというフォーマットで行われており、音声・データ(航跡情報等)が多重化されている。なお日本では山岳地であることを考慮して、有線接続にてECS-ICC間の通信ができるよう独自改修が行われている。
アンテナ・マスト・グループ(Antenna Mast Group、AMG)の形式名称はOE-349/MRC。ECS、ICC及びCRGはそれ単体ではUHF無線通信が行えない。AMGはいわば外付けのUHFアンテナであり、それぞれに接続されて運用される。
航空自衛隊のM901発射機発射機(Launching Station、LS)の形式名称はM901。M901発射機では最大4発のミサイル(STD弾、PAC-2弾、SOJC弾、GEM弾)、M902発射機では最大16発のPAC-3弾を搭載する(M902発射機にSTD弾、PAC-2弾、SOJC弾、GEM弾は搭載できるが、PAC-3弾との混載は不可)。ECSとは(SINCGARS)VHF無線または光ファイバによって通信リンク・ターミナル(DLT)を通してインターフェイスする。15KW-400Hz発電機を1基持つ。 1パトリオット中隊は5〜8基の発射機を運用する。LSは専用の発電機を搭載している。
EPP-III発電プラント。M977 HEMTTに搭載。 150KW 208V-400HzACを供給するディーゼルエンジンが2基。283.9リッターの燃料タンク2個。太い給電ケーブル。 ECSとRSには、EPP-III(Electric Power Plant-III)により電力を供給する。 ICCとCRGには、EPU(Electric Power Unit)により電力を供給する。 またAMGには、接続されているECS、ICC又はCRGから電力供給を受ける。
ECS-ECS、ECS-ICC間(音声及び航跡情報等)
UHF通信用無線機を用いたデジタルデータリンク(PADIL:Patriot Digital Data Link)により、航跡情報等の通信を行う。また音声通信の回線も有する。通信の中継を行う場合は無線中継装置によって行う。PADILは1回線あたり32 kbpsの通信容量を持つ。また通信はWEBのようにルーティングされて伝達されるよう設計されており、一部経路で通信障害が発生していてもデータリンクを確立できるよう配慮されている。
ECS-LS間(発射指令)
VHF無線又は光ファイバを採用したデーターリンクターミナル(DLT)より、デジタル通信で発射司令等を送受信する。
ICC-上位部隊間(音声及び航跡情報等)
TADIL-A(音声)、TADIL-B(航跡情報)、TADIL-J(航跡情報)により上位部隊との連接が可能である。なお日本のペトリオットでは、自動警戒管制システム(BADGE)との連接を行うためのデータモデムが搭載されている。
[編集] 地上装置の形態推移
開発当初は1990年代の航空脅威に対処する性能とされていたが、経年による脅威変化などに対応するため、各種改良が施され、現在の運用に至る。
PAC-1形態は初期型のECCM(敵の電子妨害に対抗する装置)やソフトウェア等を改修したものである。
湾岸戦争時に使われたシステムはPAC-2形態であり、イスラエルやサウジアラビアへ発射されたスカッドミサイルを迎撃したが、現在アメリカ軍から発表されている限りサウジアラビアにおいては70%、イスラエルにおいては40%の迎撃率としている。しかし、実際にはこれよりもかなり低い結果ではないかと見られている[1][2]。これはPAC-2ミサイル(MIM-104C)が弾道ミサイルに対する能力を主に置かれたものではなくあくまで副次的なものであり、ミサイルが目標の近くに近づくと自爆してそのフラグメント(破片)で目標を破壊する方式であったため目標の弾道ミサイルを確実に無力化するには性能不足であった。
湾岸戦争にて初めて実戦を経験したPAC-2形態で、複数の不具合が露見した。これに対し物理的・ソフトウェア的に応急的な対処を施した形態。主な変更点としては、レーダ装置の不要放射を抑制するレーダシュラウドの装着、GPSを利用した自動自己位置評定装置の搭載(RS,LS)による布置展開作業の自動化など。
PAC-3発射機戦術弾道ミサイルへの対処能力を本格化するため、さらなる能力向上を行った形態。変更項目としては、PAC-3弾の採用、RSの目標識別・捜索能力の向上、通信能力の向上などがある。PAC-3形態は最初から完成された状態で配備された訳ではなく、PAC-3/Config.1とよばれる形態から始まり、現在米国で配備されている最新のPAC-3/Config.3形態へと至っている。
日本が現在採用しようとしているのはこの最新の形態である。なおミサイル自体の名称であるPAC-3と混同しがちな文献があるが、地上装置(ECS等)とミサイルは別の形態名称で呼ばれており、注意が必要である(単にPAC-3形態といっても通用するが、正しくはPAC-3/Config.3形態と呼ぶ)。なおConfig.3へと形態が進化した際、RS、ECS、ICC、CRG、LSの形式名称が変更されているが、これはそれぞれが搭載する機材が能力向上に伴って大幅に変更されたためである。
初期型であるMIM-104Aが
先物取引
に引き渡されたのは1984年からであるが、逐次近代化改修がされている。それらはPAC-1、PAC-2、PAC-3という3つの世代に大きく分けられることが多い。「PAC」は "Patriot Advanced Capability" の略である。
ナイキミサイルに比べて射程の延伸、対ECM性(ECCM)やジャミング機構の向上、低高度目標撃墜能力の付与といった機能向上がなされている。
パトリオットで使用されるミサイルは以下の通り。
STD(MIM-104A)弾:初期形態から採用されているミサイル。主に航空機対処用。
SOJC(MIM-104B)弾:ジャミングを行う目標に対して対処するミサイル。
PAC-2(MIM-104C)弾:弾頭のフラグメントを大型化するなど、弾道弾対処能力を強化したミサイル。
GEM(MIM-104D)弾:シーカーの低雑音化など、目標への誘導性能を向上させたミサイル。
GEM+(MIM-104E)弾:GEM弾のさらなる改良型。
PAC-3弾:新たに設計されたミサイルで、サイドスラスタやリサリティ・エンハンサを搭載。主に弾道弾対処を行う直撃型ミサイルである(後述)。MIM-104シリーズとは異なる。
パトリオットでは(PAC-3弾以外は)TVM(Track Via Missile)と呼ばれる誘導方式が採られている。これは、ミサイル発射後、RSからTVMレーダ波を目標へ照射し、その反射波をミサイルが捉えながら誘導を行う方式である。以下に概略を示す。
ミサイル発射後、
FX
から目標へTVM波を照射する。
ミサイルシーカーでTVM反射波を受信し、RSへダウンリンクする。
RSからの情報をECSで処理し、誘導計算を行って、RSからミサイルへアップリンクとして誘導情報を送信する。
終末誘導では、目標からのTVM反射波を追ってミサイルは目標と会敵する。
TVM方式はECMへの対処を重点的に考えられた誘導方式であり、その内容は複雑である。コリレート・トラック、セミアクティブ・トラックとも呼ばれる。 なおPAC-3弾は自らのシーカーでレーダ波を出しつつ目標と会敵するため、TVM誘導は行われていない。
改良型PAC-2では航空機への対応能力が高められた。
PAC-3弾対弾道弾ミサイルとして開発がほぼ終わっていたERINTミサイル(Extended Range Interceptor Missile)を既に発射機として実績があったパトリオットの発射システムに載せたのがパトリオットPAC-3である。PAC-3はPAC-2までに比べ小型であり、今までPAC-2までのミサイルでは1発が入っていたミサイル・キャニスタにPAC-3なら4発が格納出来る様になった。これにより1発射機にPAC-3なら最大16発となる。対航空機においては1/3も小型であることから射程距離は半減した。破壊力を高める為、弾頭は近接信管だけではなくヒット・トゥ・キル(Hit-to-kill)、つまりPAC-3ミサイルの飛翔体全体を目標弾道ミサイルに直接衝突させ、その運動エネルギーによって目標を粉砕破壊する方式のものに変えられた。翼による姿勢制御だけではなく、ACM(Attitude Control Motors)と呼ばれるサイドスラスタを前部に装備し機動性を高めている。Kaバンドのアクティブ・レーダー・シーカーにより誘導される。
弾道弾ミサイルへの直撃をはずした場合の出来るだけの対処として、PAC-1で2グラム、PAC-2で45グラムであった破砕断片を225グラムペレット24個に変えて弾道弾の撃墜の可能性を高めている。PAC-3では航空機や空対地ミサイルの撃墜能力においては従来のPAC-2に劣るが、その代わりに高速で飛来する弾道弾を撃墜する複合型防空システムに生まれ変わった。
パトリオット・ミサイルPAC-2でも弾道弾迎撃の可能性はあり、湾岸戦争では一応スカッド・ミサイルの迎撃にも使用されたが、パトリオット・ミサイルは初期の設計段階から弾道弾迎撃は考慮されていなかったため当然限界がある。
パトリオット・ミサイルPAC-3はMSE(Missile Segment Enhancement)と呼ばれる向上計画が進行しており、フィンとロケットモーターの変更により最大で50%の性能向上が2008年に予定されている。